2025年9月11日
虚血性大腸炎とは
虚血性大腸炎(きょけつせいだいちょうえん)は、大腸の一部に一時的に血流が不足することで起こる炎症性の病気です。血流が少なくなると、大腸の粘膜が傷つき、腹痛や下痢、血便などの症状が出ます。中高年の方に多くみられますが、便秘や動脈硬化、高血圧などが関係していることもあります。男女比は1:2~3程度とやや女性に多くみられます。
下腸間膜動脈の支配領域である左側結腸の下行結腸~S状結腸が好発部位となってます。そのため左下腹部が痛い場合が多いです。
主な症状
- ・急に始まる強い腹痛(特に左下腹部)
- ・下痢や軟便
- ・血便(鮮血や粘液が混ざることがあります)
- ・腹部の張りや不快感
とくに、腹痛、下痢、血便が3大症状とされており、90%以上の例でみられます。また、これらの症状は数時間から数日で落ち着くこともありますが、再発することや他の病気と区別がつきにくい場合もあります。
原因・なりやすい方
- ・動脈硬化、高血圧、糖尿病など血管の病気がある方
- ・便秘や下剤の使用
- ・脱水や急な血圧の変動
- ・加齢による血管の変化
これらが組み合わさることで、大腸の血流が一時的に不足し、発症すると考えられています。
また、稀に浣腸や大腸カメラの前処置薬、経口避妊薬、エストロゲン製剤でも誘因となることがあります。
診断について
虚血性大腸炎は、症状や血液検査、CT検査、大腸カメラなどで診断します。大腸カメラでは、粘膜に浮腫やびらん、出血が見られるのが特徴です。他の大腸の病気(潰瘍性大腸炎、大腸がんなど)との区別も重要です。発症早期に大腸カメラを行うと痛みが強いため、一度収まってから検査をすることが一般的です(重症の場合は穿孔のリスクもある)。
治療
多くの場合は安静で改善します。絶食、点滴加療や抗菌薬の投与が必要になることもあります。症状が軽い場合は外来で経過観察できることもありますが、強い腹痛や出血が続く場合は入院治療が必要です。もっとも重症である壊疽型(血流がなく組織が死んでしまうこと)は手術を行う場合もあります。
再発・予防
虚血性大腸炎は再発することがあります。
予防のためには、
- ・便秘の改善(食物繊維や水分摂取)
- ・規則正しい生活
- ・血圧・糖尿病・脂質異常症のコントロール
- ・脱水を避ける(夏場や入浴時の水分不足に注意)
が重要です。
まとめ
虚血性大腸炎は突然の腹痛や血便で発症することが多いですが、多くは安静・点滴治療で改善します。他の大腸の病気と区別するためにも、症状が出たら早めの受診が大切です。藤野クリニックでは、大腸カメラを用いた診断や適切な治療方針のご提案を行っています。